入場無料 事前登録不要

特別企画「探検大学の誕生」

京都大学の登山・探検・フィールドワーク

~チョゴリザ登頂60周年を記念して~

1958年、桑原武夫隊長率いる京都大学学士山岳会隊がチョゴリザに初登頂した。京大がヒマラヤに初登頂した初めての記録である。この年は今西錦司・伊谷純一郎によるアフリカ探検、西堀栄三郎による南極越冬、川喜田二郎による西北ネパール、中尾佐助によるブータン、梅棹忠夫による東南アジアなどの学術探検が一気に花開いた。京大が「探検大学」と呼ばれる一つの契機の年だった。
それから60年の節目に、京大の登山や探検やフィールドワークの歴史を振り返り、未来を考える三つの催しを企画した。


・シンポジウム「探検大学の誕生」

2018年6月17日 詳細↓

・写真展「探検大学 早わかり」

2018年6月1日~7月16日 詳細↓

・特別展示 「花嫁の峰チョゴリザ、 そして南極……」

2018年6月5日~7月1日 詳細↓

シンポジウム「探検大学の誕生」

日程
2018年6月17日 13時―17時半
場所
京都大学吉田キャンパス国際科学イノベーション棟5F

探検大学の誕生: ヒマラヤ初登頂、アフリカ初探検、南極初越冬の60周年

1958年の京都大学

京都大学は「探検大学」とよく呼ばれる。その契機を顧みたい。

1958年、桑原武夫隊長率いる遠征隊がチョゴリザ(7654m)に初登頂した。京大がヒマラヤに初登頂した最初の記録だ。その後、ノシャック、サルトロカンリ、ガネッシュ(アンナプルナ南峰)とヒマラヤ初登頂が続く。隊長をつとめた桑原は、人文科学研究所の所長をつとめたフランス文学者で、文化勲章を受章している。

1958年は、今西錦司・伊谷純一郎によるアフリカ初探検の年でもある。今西らが名古屋鉄道に働きかけて創った日本モンキーセンターが派遣した隊だ。最初の目標はゴリラだったが、すぐにチンパンジーに切り替えた。今西は、霊長類学という学問を確立し、文化勲章を受章している。

1958年は、西堀栄三郎らによる南極初越冬の年でもある。第1次南極観測隊を乗せた観測船「宗谷」は57年1月、東オングル島に到着し昭和基地が建設された。西堀が率いる11人の越冬隊員は基地に残り、翌58年2月に帰国の途につくまで厳しい越冬生活に耐えた。西堀は、京大助教授から東芝に転じて真空管「ソラ」の開発にあたった人だ。品質管理学をおこしデミング賞を受賞した。

ちなみに、桑原・今西・西堀は、三高山岳部から京都帝大旅行部(今の京大山岳部)の同級生である。今西らはヒマラヤ初登頂を目的として京都大学学士山岳会(AACK)を1931年に結成した。ヒマラヤ初登頂、アフリカ初探検、そして南極の初越冬として同時におこったのが1958年で、今年はその60周年にあたる。

ブータン・西北ネパール・東南アジア

ヒマラヤ、アフリカ、南極を率いた3人は、今西が1902年、西堀が03年、桑原が04年生まれだ。したがって当時56-58歳だった。じつは同じ1958年に、彼らの薫陶を受けたひとまわり若い世代も小さな自前の探検をおこなった。中尾佐助によるブータン、川喜田二郎による西北ネパール、梅棹忠夫による東南アジアの学術探検だ。中尾が1916年、川喜田が20年、梅棹が20年の生まれなので、38-42歳のころである。

中尾のブータンは『秘境ブータン』という著作にまとまった。このブータン調査が、のちに彼の照葉樹林文化論に結実していく。川喜田の西北ネパールは『鳥葬の国』という著作になり、フィールドワークをまとめる技法はKJ法という発想法になった。梅棹は「文明の生態史観」という構想に基づいて、初めての東南アジア調査をおこなった。国立民族学博物館をおこし文化勲章を受章している。彼の『知的生産の技術』と京大式カードは一世を風靡した。

中尾・川喜田・梅棹もまた、今の京大山岳部の仲間だった。1956年には山岳部から分派して日本初の探検部ができている。京都大学の若者たちは、登山・探検・フィールドワークを通じて、未知へのあこがれを育んだといえるだろう。

フィールドワークを育む京都

探検大学60年の歴史を振り返ると、彼らの活動にはひとつの共通した特徴がある。登山や探検に情熱を注ぐだけでなく、それを学術研究へと結びつける伝統だ。これを梅棹は、「未踏の大地(フィールド)へのこころざしは、あらたな学問領域(フィールド)の開拓につながっている」と表現している。フィールドから刺激を受け学び続ける。京都大学が今も「探検大学」と呼ばれる伝統の礎がそこにあるだろう。

京都にこうしたフィールドワークの伝統がなぜ生まれたのか、3つの要因を考えた。第1に、山紫水明の自然がある。大文字山や比叡山に登り、鴨川べりを散策する。北山や比良山系も近い。第2に、世界中から人が集まる。110年前の1908年には、中央アジアの探検家スウェン・ヘディンが京都大学で講演している。さまよえる湖ロプノールや楼蘭の発見の話は人々の心を揺さぶっただろう。1922年にはアルバート・アインシュタインがノーベル賞をもらって来日した。京都観光の3日間を案内したのは当時19歳の西堀だった。第3に、街が適度に狭い。1100年間の古都はどの辻を歩いても歴史があって楽しい。学生も教員も多くは大学の近くに住み徒歩や自転車で通っているので、夜の帰宅時間を気にせず語り合える。伝統を育むそうした京都の環境は今もこれからも変わらない。

7月16日まで写真展「探検大学 早わかり」を京都大学百周年時計台記念館「京大サロン」で開催している。7月1日まで企画展「花嫁の峰チョゴリザ、そして南極…」を同じ時計台の「歴史展示室」で開催している。ぜひ、この機会にご覧いただきたい。

AACK会長 松沢哲郎


参加人数
シンポジウム:236名 / 懇親会:84名

写真展「探検大学 早わかり」

日程
2018年6月1日~7月16日
場所
京都大学百周年時計台記念館「京大サロン」内

特別展示 「花嫁の峰チョゴリザ、 そして南極……」

日程
2018年6月5日~7月1日
場所
京都大学百周年時計台記念館 歴史展示室内「企画展示室」
※入場無料 ・事前登録不要:
懇親会は終了いたしました。-> 6月17日の懇親会のみ事前登録制となっております、懇親会参加をご希望の場合はお問い合わせください。