霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院(略称PWS)が、そのプログラムの修了を認定する要件として、5年間(編入生は3年間)の履修課程を通じて、以下の項目の実践状況・到達度を確認する。①修士課程相当の学生においては、本プログラムのカリキュラム・ポリシーに沿って設計された実習の履修、および上級生としての実習実施への貢献、②博士課程相当の学生においては国内外長期自主研修インターンシップ、③研究のための知識・情報収集技術・情報発信力の獲得、およびコミュニケーションツールとしての言語習得。以上についての確認の機会は、PWSが主催するセミナーでの発表と面接である。これらにより、フィールドワークによって培った「知行合一」の精神によって、「地球社会の調和ある共存」を実現するグローバルリーダーの人材育成をおこなう。研究・教育・実践の新しいニッチとして、国際機関やNGOで、博物館や動物園等で、そして諸外国において、日本の眼に見える貢献を果たす人材を育成したい。なお、日本は先進国で唯一、霊長類が生息する国であり、また、野生のクマ、シカ、イノシシ、ニホンザル、海獣類などの中・大型哺乳動物が人間との軋轢を高めている。このような実態を踏まえ、国内のワイルドライフに対しても、世界に誇れる保全管理体制の構築・実践を行う人材の育成を図る。
第1の修士課程相当の実習は、京大が保有する国内の野外実習拠点等を活用した各種実習と、履修生の自主企画による国内外の「自主フィールドワーク実習」である。これらの履修を必須とするとともに、履修後もチューターとして下級生の実習履修に貢献することを期待する。
第2の博士課程相当の国内外長期自主研修インターンシップについては、国内外研究拠点・連携施設のいずれかの場所を中継基地として、PWSが目指す3つの出口「博士学芸員」「国際機関」「アウトリーチ」に対応した「自主企画研修インターンシップ」を実践することを必須の要件とする。
第3の研究のための知識、情報収集技術、情報発信力の育成、および、コミュニケーションツールとしての言語習得については、PWS及び野生動物研究センターが主催するセミナー受講および実習で習得するほか、自学自習を支援し、フィールドワーク実施時における「現地習得」を重視する。フィールドに出ている場合を除き、PWSが主催するセミナー(使用言語を限定せず)の参加は必修である。なお言語習得に関しては、母語以外の多言語学習を推奨する。英語は必修で、英語が母語の場合は最低ひとつの他言語が必修である。その他の言語習得についても強く推奨する。現場での自学自習を基礎に、英語を公用語とした実習やPWSが主催するセミナーやシンポジウムをおこなう。特に調査地の現地語は引率指導教員による現地講義を主軸に、フィールドワークを通じた「体得」による生きた語学力習得をめざす。また、ネイティブの外国人協力者の紹介など、自学自習に際する支援は惜しまない。言語習熟度合については、ネイティブの外国人教員等を中心に毎年次の到達度を評価する。プログラム修了時の到達度を一律には設定しないが、年次ごとの進歩・改善が不可欠である。
以上の3要件(実習の履修・貢献、国内外長期自主研修インターンシップ、研究のための基礎能力・語学の習得)を満たしているか確認したうえで、総合評価をおこなう。総合評価は、HQと称する事業の核となる分担者を中心に、履修者の在籍研究科の指導教員およびPWS指導教員によって構成される「PWS研究指導審査会」において、所与の成績評価に面談の結果を加え、総合的に優・良・不可(SAC)の3段階で評価して良以上の成績を修めることを要件とする。